離婚当日。


私はまたしても早朝に目が覚めた。

慌てて飛行機のチェックインをする。

時刻は午前4時。外はまだ暗い。 


隣の部屋から夫のいびきが聞こえる。

うるさくて嫌だった夫のいびきも

これが最後だと思うと愛おしい。


昨夜は楽しかった。

一緒にスーパーをハシゴして、

美味しそうなお刺身を選んで、

家でテレビを見ながら飲んで、

くだらない事で笑い合った。

飲みすぎて途中から記憶がない。


9ヶ月前まで、

そんな日常が当たり前に続くと信じていた。

今日の午後には離婚届を出す。

もう夫とは他人になるのが


今だに信じられない!


今は何も考えたくない。寝よう。

そして、夫が部屋を出る音で目が覚めた。


おはよう。昨日はたくさん飲んだねー。

何時に布団に入ったかも覚えていないよ。


と眠そうな夫。

良かった、夫も何も覚えていない。


呼び出しがあったから職場に行ってくる。

午後には帰るから。

今日の予定を教えて。


引越しが10時で

19時過ぎのフライトだよ。


と答えると


そっか、それだとご飯食べて役所に行って

まだまだ時間があるね。

温泉でも行ってスーパーでお土産買おうか。


と夫の提案。

結婚していた頃のいつもの週末のコースだ。

半日後には他人になるなんて

やっぱり信じられない。


じゃ、帰ったらどこ行くか決めよう。


そう言って夫は家を出た。

これまで私は、夫が家を出たら

車が見えなくなるまで窓から

手を振り続けていた。

でも今日はそれはしない。



荷造りはあっという間に終わり、

ついにずっとテーブルの上に置かれていた

あれに手をつける。

そう、


財産分与のお金。


夫は何日もかけて

ATMからお金を引き出したそう。

帯封のないお札の山は、思った以上に

厚みがあった。

これが6年間の夫婦生活の重みだ。

数えると


予定より100万円多い。


義母から預かっていたお金を

相殺するのを忘れたのかな??


このまま知らんぷりしてもらっちゃう?

どうせもう会わないだろうし。

あぁ、もう会わないのか。

そう思ったら涙が溢れた。


引っ越し屋が来る前に夫が帰宅した。


荷物、まとまったね。


そう夫は口にすると

部屋に引っ込んでしまった。

きっと夫は今、泣いてるんだろうな。


夫は私の前でよく泣いた。

初めてのおつかいでも泣いたし、

動物が命を落とす映画は特に弱いらしく

子ども向けの映画でも号泣していた。


そんな子どもみたいな夫が

可愛くて大好きだった。

守ってあげたいと思っていた。

こんな事になるなんて考えもしなかった。


予定より少し遅れて引越し屋さんがきて

テキパキと荷物を積んでくれて

あっという間に引越しが完了。


出発前に銀行にお金を入金したいので

夫に100万円の事を聞いた。


それで合ってるから。

母には俺からお金を返すから安心して。


というので有り難く頂戴することにした。

いくつかの口座に分けてお金を入金し、

家に戻る。


じゃ、ご飯食べてから

市役所に行こうか。


夫に鍵を返して部屋を出る。

多分、忘れ物はない。

あってももう捨ててくれればいい。


さよなら我が家。

夫と暮らした4つ目のお家。

いろいろありがとう。





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